Dips戦略の超解説 生い立ちから計算式・応用まで

Boctok01(自動売買システム)に実装したDips戦略は10月末の公開からすでに+728,008円ものプラスになっています。なぜ、こんな誰でも知っているトレーダーの一般常識ともいえる方法が有効に働いているのかを詳しく解説しました。

更にさらに・・ナント、計算式まで公開してありますので自動売買ユーザーはもちろん裁量トレーダーや、自分で自動売買システムを作りたい方にも参考にしてもらっちゃってゼンゼン大丈夫です

目次

Dips戦略の生い立ち

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※(英)Dipとは水などに浸す〔動詞〕の他、凹みや価格の一時的な下落〔名詞〕を意味します。〔例〕A dip is a buying opportunity.(押し目は「買い」のチャンス)

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日経225Miniなど株価指数先物のデイトレードで生計を立てている人の数は、多くの皆さんの想像よりきっと多いのだと思います。

私の自動売買システムを使っていただいている方の中には何人も専業トレーダーの方々がいらっしゃいます。

30代の男性から60代の女性や70代の男性までもが永年に亘り専業トレーダーとして生計をたてています・・・そんなプロの皆さんが一体、どんな手法でデイトレしているか知りたくありませんか?

トレード手法は十人十色と言われますが、特殊な手法や所謂“聖杯”のような手法があって成功できているのではないんです。「私は難しいことはやってません、こんな単純な作業なので誰でもできるはず」だと云われます。差支えない範囲で列記すると

  • レンジを決めたトレード
  • 押し目買い&戻り売り
  • 決めた時間内だけトレード
  • 必ずロスカットを入れリスク管理する

そんな程度なのですが、中でもトレンドフォロー&押し目買い・戻り売りはデイトレードの“王道”と言える手法です。

確かに私も以前は凝りに凝ったストラテジーを作製しましたが、それよりもごくごく取引の王道のような手法をシステム化したものの方が堅牢性に優れ、実際に結果を残してくれます。

最近のBoctok01(自動売買システム)には単純なストラテジーしか実装していないのはその為です。

たまに勝手な造語をストラテジーの名称につけて、さも凄そうなモノだというような人もいますが、実のところそれは実戦で機能しないか又は“車輪の再発明”をしたに過ぎません。

Boctok01(自動売買システム)に実装したDips戦略はデイトレードの古典的かつ王道的手法である「押し目買い」「戻り売り」を完全自動化したものです。

押し目買い・戻り売りとは?

トレンド方向にポジションを持つのはデイトレードの基本ですが、価格は一方向にまっすぐには進みません。思惑や利益確定・ロスカットなどの参加者の様々な事情のために常にアップダウンしチャートはギザギザな形状を描画します。

デイトレードの素人は価格が上昇したら遅れまいと慌てて飛びつき「高値掴み」でロスカット、今度は「底値売り」でロスカットというような無様な取引をしがちです。

対して、専業トレーダーなど熟練者は慌てて飛びつくことはしません。アップダウンする価格の特性をよくわかっているので、「買う」場合には押し目を待って買い、「売る」場合には戻りを待って売ります。

素人の高値掴み・底値売り、プロの押し目買い・戻り売り
素人の高値掴み・底値売り、プロの押し目買い・戻り売り

なぜ?押し目買い・戻り売りが“トレードの基本”と言われるのか

ここでカンタンな問題です

Question①:

ロスカットにかかる可能性の高いのは素人の高値掴みと熟練者の押し目買いのどちらでしょうか?

Question②:

利益確定できる可能性が高いのは素人の高値掴みと熟練者の押し目買いのどちらでしょうか?

押し目買いはトレードの基本

Answer①:

ロスカットにかかる可能性の高いのは素人の高値掴みです。値幅の大きな今の相場では、100円幅のロスカットを入れておいても高値掴みしたポジションではスグにロスカットにかかってしまいます。

Answer②:

利益確定しやすいのは熟練者の押し目買いの方です。

あらゆるマーケットにおいて押し目買い・戻り売りは取引の基本的手法と言われる理由がお判りになったでしょうか?

専業トレーダーの裁量トレードでも自動売買システムでのデイトレードでも、「押し目買い・戻り売り」ができるかどうかで手にする利益が全然違ってくるのです。

2020年のコロナ過相場は特殊、素人でも勝てている人もいるが・・・

「いやいや、そんな事をしなくても自分の自動売買システムはシンプルなトレンドフォローでも勝てている」

‥という人もいるかもしれません。

2020年のコロナ過相場は各国政府が前例のない金融緩和策を講じ、株価は実体経済とは大きく乖離して上昇しています。

この相場では例え高値掴みをしてもドンドン上昇していくので素人でも勝てる相場でもあります。

しかし、日本の株式市場は本質的に保合の多いのが特徴です。情勢が落ち着けば、トレンドを追いかけるだけの陳腐なトレードシステムでは負けばかりになってしまいます。

今までの自動売買システムにDipsを実装できなかった理由

自動売買システムへのDips戦略の実装を試みたのは2年ほど前でした。

ですが、当時は現在のBoctok01(自動売買システム)ほどは多くの処理をできなかった為に、無理に詰め込んでも動作が重くなってしまい思うような動作ができずに諦めてしまった経過があります。

現在のBoctok01(自動売買システム)では一つの構文で複数処理を行う造りにするなど内部の関数・VBAなどを合理的に連携させ創り直してあります。

✔現在のBoctok01(自動売買システム)のデイトレ注文処理シート

Boctok01(自動売買システム)のデイトレードシステム注文処理シート(非公開)

Boctok01.70以降のバージョンでは新しいプラットフォームを使用しています。

最大50のデイトレードポジションと最大12のサヤトリポジションを同時に且つ、瞬時に処理できるようになりDips戦略を実働できるようになったものです。

〔制作過程〕Dips戦略をどうプログラム化していったか

自動売買システムを制作する場面での思考のベクトルなど参考に解説いたします。

1)押し目買い・戻り売りの動作をどうプログラム化するか?

私のように自動売買システムを制作する者にとって、人の感情やマーケットの特性といった曖昧模糊としたものをどうプログラム化するかがクリエイトする面白さでもあり難しさでもあります。

ここをどう作るのかを解説するのは短時間ではできませんが、感覚的には理想とする動作をアタマの中でビジュアライズししっかりイメージしてから関数やVBAスクリプトを書いていきます。

ストキャスティクスなどテクニカル指標のパラメータを組み込みパラメータ調整するとか、そういった間違ったアプローチでは自動売買は良いものができません。

2)理想的な押し目(戻り)だったかどうかは後にならないと判らない

後からチャートを見れば簡単な相場に思えても、実際の取引の現場ではどこが押目であるかどこが戻りのポイントであるかは誰にも判りません。

プログラム的にどこが押目(戻り)であるかを定義するためには、条件を満たしたらそれが押目であると決める必要がありますが、その方法には下記の3つの案がありました。

3)制作を試行した押し目(戻り)判定のアルゴリズム

判定方法としては、下記A~Cのアルゴリズムが候補に考えられました

A第一候補

チャートに1本の単純移動平均線を描画し価格との位置関係で判定する。グランビルの法則を参考に考えた。

B第二候補

単に値幅と戻りだけで判定する(専業トレーダーもやっている方法)

C第三候補

トレンドラインを疑似的に描画し、押し目(戻り)を判定する

もし、グランビルの法則を知らない人がいたら取引手法の基本の基本なのでご自身で調べて下さい。

具体的にはグランビルの法則・「買い」4パターンのうち②押し目買いと③買い増しのパターン、「売り」4パターンのうち⑥戻り売りと⑦売り増しの計4パターンを関数に落とし込む作業です。

移動平均線と付随する関数で仕上げるだけなのでそれ自体は難しくはありませんでしたが、値動きパターンによって移動平均線の値や変数をいじる必要もあり、せっかく作ったものですが破棄してしまいました。

第二候補の値幅と戻りだけで判断する方法は、あまりにも単純すぎるので「こんな簡単でいいのだろうか?」と疑問もあり第一候補にしませんでした。これは計算式も1行だけで済んでしまうほど簡単でした。

第三候補のトレンドラインの描画はExcel関数とVBAで作るには手がかかりすぎそうで途中でやめてしまいました。

〔公開〕実装したDips戦略の新規発注アルゴリズムと計算式

株価の「押し目計算」は一般に次の計算式が用いられます

A:直近の高値(円)×B:押し目水準(%)=押し目計算 

※「B」押し目水準には、半値・1/3・フィボナッチ比率(61.8%、38.2%)などの近似値が一般に使われます

日足チャートでは上記計算式のままでよいですが、日経225Miniのデイトレードでは時間枠が短く値動きが激しいために「A」の値は“予め仮定された値幅”を使う事になります。この場合、50円幅~200円幅が妥当だと思われます。

“予め仮定された値幅”はBoctok01(自動売買システム)に古くから実装してあるLAST15やIR戦略,Break戦略にも用いられており特別なものではありません。

更に株価指数取引では押し目計算の際に銘柄毎に呼値(=価格がいくら刻みで変動するか)を合わせなくてはなりません。

よって、Boctok01(自動売買システム)に実装したDips戦略の押し目計算式は下記の通りです。

押し目計算=MROUND((A:予め仮定された値幅(円)×B:押し目水準(%)),C:呼値)) 

MROUND関数は数字を丸めたいときに使います。=MROUND(123,5) なら123を5で丸めた値の125となります。=MROUND(122,5)ならば120になります。

A及びBは、Boctok01(自動売買システム)の設定部分では次の箇所に相当します。

Dips戦略の押し目価格の計算式とアルゴリズムはたったこれだけです。

ところで、こんな大事なことを公開しちゃって大丈夫なの??

そう心配される方もいるかもしれませんが心配ご無用です。

これはデイトレーダーのごく一般的かつ古典的手法、勉強しているトレーダーなら誰でも知っているいわば“一般常識”です。

この記事を参考に明日からご自身でデイトレードに使っていただいても何ら問題はありませんので、どうぞ使ってください。

しかしながら、裁量トレード(=手作業での注文)で決まり通り新規注文を入れ、ロスカットでリスク管理をしっかりしながら日々継続してトレードできる人はまずいません。

それを飽きもせず継続してできる僅かな人だけが専業トレーダーになり得ます。

それならば、これを完全自動化したいと思っても、私のBoctok01(自動売買システム)と同じように動作をキチンできるものを造るには、それこそ果てしない労力が必要です。

私は自動売買システム歴15年の経験と自信の上から、お役に立つ方もいらっしゃいますのでこのようなアルゴリズムは以前から極力公開するようにしております。

〔解説〕Dips戦略の設定と新規発注動作の具体例

下図は2020/11/26の日経225MiniでDips戦略の設定項目と新規発注の図解です

  1. Day=デイセッションで値幅測定の起点とする時刻
  2. Night=ナイトセッションで値幅測定の起点とする時刻
  3. 仮定する値幅
  4. 押目水準
例)Dips_Nのデイセッション&ナイトセッションでの新規動作

■デイセッション

  • 9:30を起点として値幅を測定
  • 9:30の始値は26370円であった
  • 9:38に設定された値幅に達した(26370+70=26440)
  • 押目水準で「買い」を待機した(26370+(70×50%)=26405)
  • 9:55に新規買いが約定
  • その後利益確定できた

■ナイトセッション

  • 16:30を起点として値幅を測定
  • 16:30の始値は26580円であった
  • 17:06に設定した値幅に達した(26580-70=26510)
  • 押目(戻り)水準で「売り」を待機した(26510+(70×50%)=26545)
  • 17:27に新規売りが約定
  • その後利益確定できた

いかがでしょうか?

先程のあんな単純な計算式だけで、理想に近いポイントでのデイトレードができているのが見て取れると思います。もちろんロスカットが連続してしまう時も当たり前のようにありますが、デイトレードの基本をおさえた取引なので例えドローダウンがあってもしっかり利益が積み重なっています。

Dips戦略の応用・複数銘柄、複数ポジションによる補完効果

Boctok01(自動売買システム)に実装したDips戦略では日経225Mini・TOPIXmini・JPX400・MOTHERSのうち3銘柄を同時に取引可能で、さらにそれぞれ6ポジションまで保有ができます。

複数銘柄、複数ポジションによる補完によって損益を安定させる効果が生じます。

1)複数銘柄による損益の安定化効果

日経225Mini/JPX400/TOPIXminiなど株価指数の値動きは似てはいますが同じではありません。Boctok01(自動売買システム)に実装したDipsでもどれかマイナスでも他が補いトータルでプラスという事が良くあります。

2020/11/25デイセッション Dips戦略の成績+6,870

  • Dips_N(日経225Mini) +19,148
  • Dips_T(JPX400) +2,824
  • Dips_M(TOPIXmini) -15,102

2020/11/25ナイトセッション Dips戦略の成績+23,620

  • Dips_N(日経225Mini) +30,648
  • Dips_T(JPX400) -9,676
  • Dips_M(TOPIXmini) +2,648

2)複数ポジションによる損益の安定化効果

Boctok01(自動売買システム)に実装したDipsは3銘柄×6ポジション=18ポジションまで保有可能です。これらを「起点とする時刻」を変えて使用することで時刻ごとに変化するトレンドを捉えることができます。それにより下記のような補完効果があります。

※ポジションはすべて使う必要はありません(私は全ポジションは使っていません)

  • 1つのポジションの判定が誤りであっても他のポジションの判定が正しく損益を安定化してくれる
  • 相反する方向のポジションを持った際にも、それぞれが有利な位置で持たれやすい

2020/11/18デイセッション Dips戦略の成績+23,620

  • Dips_N(日経225Mini) +10,824
  • Dips_T(JPX400) +2,648
  • Dips_M(TOPIXmini) +3,648

この日はそれぞれの銘柄において「売り」と「買い」のポジションを持ち補完しあってプラスになりました。

Boctok01(自動売買システム)ではデイトレードのポジション1つにつき1枚の取引しかできません。

もし、「もっとたくさん取引できるようにして欲しい」という人がいたら、私からは愚かなマーケット退場予定者としか思えません。

自動売買でも裁量トレードでも、相場から撤退していく人の原因の多くは「枚数の張りすぎ」です。

マーケット暴落時には株式の信用取引をしていたために破産する人がいますが、信用取引でのレバレッジは3倍に対し、日経225Miniは16倍(2020/11/28現在)もあります。

わずか3倍のレバレッジで破綻してしまう一般の人が16倍ものレバレッジで沢山の枚数を取引をして無事でいられるほどマーケットは甘くはありません。

リスク管理が完全自動のBoctok01(自動売買システム)でも、少なすぎ程度の枚数で取引するのが成功への近道です。

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